2012年3月21日水曜日

現代社会学科 遠藤有唯さんの答辞


現代社会学科の高木です。

昨日、平成23年度いわき明星大学学位記授与式がおこなわれました。
感動を呼んだ、現代社会学科の遠藤有唯さんの答辞を
本人の了解を得て、ここでもご紹介したいと思います(全文)。


答辞

 冬の寒さも和らぎ、木々の芽吹きや吹く風の和らぎに春の訪れを
 感じられる今日、いよいよ私たちは旅立ちの日を迎えることとなりました。

 本日は、関口武司学長を始め、諸先生方、並びにご来賓の皆様方に
 ご臨席を賜り、このように盛大な学位記授与式を挙行していただきまして、
 卒業生一同、心より御礼申し上げます。
 只今皆様からいただきました激励のお言葉が心に染みわたり、私たちは
 多くの人たちに見守られ、いわき明星大学を卒業していくのだと
 実感しております。
 同時に、これから自分が選んだ道を歩んでいくことに感じる多くの不安を
 希望や期待に変え、明日から始まる真新しい日々を全力で
 駆け抜けていかなければならないと思っております。

 思い返せば、卒業を目前にした日々の中、通い慣れたこのキャンパスに
 通うこともなくなり、ここにくれば会うことのできる友人に
 会えなくなることを思い、当たり前と感じていた日々が終わっていくことを
 漠然と感じていました。
 そのようないつもと変わらぬ日々のなかで、忘れもしない一年前の三月十一日、
 東日本大震災が日本を襲い、現在でも已然、収束することのない
 福島第一原子力発電所の事故が起きました。
 命の重さと日常の有り難みを知るにはとてつもなく大き過ぎる代償であり、
 「絆」という言葉だけでは片付けることでできないものでした。

 私が、いわき市を離れて避難しなければならないとき、家族を守るため、
 自らが生きるために懸命になっている多くの友人を残し、自分だけが
 安全な場所に避難することが、とても卑怯なことであり、
 後ろめたさすら感じました。
 そんな大切な友人をそばにいて励ますことすらも、ましてや助けることなども、
 何ひとつすることができない自分の無力さに身体を、心をもがれるようなくらい
 何よりも辛いことだったのを覚えています。
 
 むしろ、地震が起きた直後から「生きてる?大丈夫?」と何度も連絡をくれ、
 原発事故が深刻になっていくたびに「もう学校へは通えなくなるかもしれない」と
 弱気になる私に「絶対にまた、学校で会おう」とそう力強く言ってくれた
 友人たちや後輩、先生方の言葉にどれほど支えられたことでしょう。
 震災のために散り散りになってしまった2ヶ月もの間、友人と心の距離を
 感じることは決してありませんでした。この忘れることのできない震災を通して、
 毎日ふかふかの布団で眠れることや、いつでも温かい食事を食べられること、
 ささいな話で笑い合える友人がそばいること、電話の向こうで家族の声を
 聞けることなど、ささやかな日常にこそ本当のしあわせがあること、
 何ひとつ当たり前ではないことを、誰もが共通して感じたことだったのではないで
 しょうか。
 
 あの震災から一年が経った今でも、いわき明星大学の学生や保護者の方々、
 教職員の方々の中にも、震災の日から休むことなくずっと懸命に闘っている方々が
 おられると思います。わたしたちはこれから社会に出て働く者、
 大学に残り研究を続けていく者などさまざまですが、多くの者がいわきを離れ、
 それぞれが別々の場所で、来年の三月十一日を迎えていることでしょう。
 しかし、どんな場所にいたとしても、たとえ福島に対しての心ない声を聞くことが
 あったとしても、わたしたちの心はいつまでもいわきと共に、
 福島と共にあることをどうか忘れないで下さい。
 
 今日まで熱心にご指導下さいました先生方、親身になって相談にのって
 下さいました職員の皆様、力になって下さった多くの方々に
 厚く御礼申し上げます。
 皆様の声かけや寄り添いがあったからこそ、この日を迎えることができました。
 
 そして、どんなときでも陰ながら支えてくれた家族の応援を信じない日はありません
 でした。実家に帰るたび、すこし小さくなったように感じる父の背中や、いつも温かく
 優しい母の手を握るたびに、もっとしっかりしなければと自分の不甲斐なさや
 焦る気持ちに自分の成長が追いつかず、不安に押しつぶされそうになったことも
 ありました。そのような葛藤を仲間と共に乗り越えてきた私たちの背中は、
 四年前の入学式のときよりも少しだけたくましく、
 立派になったのではないでしょうか。
 厳しくも優しく私たちの成長を見守ってくれた家族には、一生をかけてでも
 恩返しをしたいと決めています。両親のように、大切な人たちを自分の力で
 守れるほどに成長するにはもっと多くの時間がかかると思いますが、
 もう少しだけ待っていて下さい。

 私は、このように卒業生代表として壇上に立たせて頂き、答辞を読ませて頂いて
 おりますが、決して皆様に自慢できるような立派なことを行ってきたわけでは
 ありません。
 いまでも、私などがこのような立派な舞台で答辞を読んでいいのかと思っています。
 しかし、自分よりも大切だと思える友人たちと同じ時間を過ごせたこと、
 いつも私たちを温かく包んでくれる家族がいること、私たちをここまで成長させて
 下さった先生方、職員の皆様方と出会えたことは、私の人生のなかで
 恥じることのない唯一の誇りです。限りある貴重な人生のなかで
 私たちに出会ってくださり、本当に、本当にありがとうございました。

 最後になりましたが、被災地の私たちを支えてくださった多くの皆様方、日本全国、
 世界各国の皆様方に心から感謝を申し上げます。今日いただく学位記は決して
 わたしたちだけのものではありません。今日まで復興に携わって下さった
 多くの方々に代わり、これから私たちが美しい東北を取り戻していくという
 被災地の私たちを支援してくださった皆様への決意の証です。
 それぞれが感じた震災の記憶を忘れることなく心に携え、
 何よりも目の前にいる人を愛おしみ、明日が訪れるしあわせを噛みしめながら、
 輝かしい未来を最後まで全力で生き抜いて参ります。

 いわき明星大学のますますのご発展と
 皆様方のご健闘とご多幸をお祈りいたしまして
 答辞とさせていただきます。

平成二十四年三月二十日
                         平成二十三年度卒業生総代
                          人文学部 現代社会学科
                                    遠藤 有唯

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